あらすじ
飛行機の操縦手である主人公はサハラ砂漠の真ん中に不時着してしまう。飲み水が蓄えられている八日のうちに飛行機のエンジンを修理しなければならない極限状態に追い込まれた。
不時着した最初の夜、主人公は小さな男の子と出会う。男の子は砂漠の中心で主人公に羊の絵をせがんだ。六歳の頃に周囲の大人の無理解によって、絵描きの道を自ら閉ざした主人公は絵の描き方を知らなかった。困り果てて六歳の頃から今に至るまで誰にも理解されなかった、大蛇が象を丸呑みにした絵を男の子に描いたところ、初めて理解を得ることができたのだった。
不時着して五日目、主人公が「羊は花を食べるのか?」「花はなぜトゲを持ったのか?」という一見何気ない疑問を無下に扱ったことによって男の子は泣き出してしまう。
男の子の生い立ちが、疑問の持つ本当の意味が明らかになったとき、空に浮かぶ星一つ一つが愛おしい物語が始まる!
今回は世界的名作小説『星の王子さま』を紹介していくのじゃ!
正直なところ、この作品を語ってしまうことそのものが作品へのアンチテーゼになってしまうような気もしなくはないのじゃが……そうはならぬようにぜひ、皆の衆の眼で確かめてみてほしいのじゃ!
- 平準化の代償
- 肝心なことは目に見えない
- 最後に
平準化の代償
主人公が初めて描いた、そして誰にも理解されなかった大蛇が象を丸呑みにする絵。大人たちは皆「帽子だ」「そんな絵を描くより勉強しなさい」と言って外見だけでは本質を理解できないししようともしないことを象徴するエピソードと言えるのじゃ
しかしワシとしては大人に対してやや同情的に見るのじゃ
大人の世界にはどこまでも繊細な共通認識が求められておる。本来は本質を理解できる者から説明しなければ分からない者、そもそも本質を理解しようとしない者すべてを包括して支えるためには、数字と権威と規律でがんじがらめにしなければならぬ
であるなら、そのがんじがらめにされた大人の世界で生きる処世術を真っ先に身に着けさせようとするのは何もおかしいことではないのじゃ
このような背景から主人公は大人たちの言うように勉強をしていき、段々と世界を心で見る視力を失っていくのじゃ(世界を心で見ることに関しては後述するのじゃ)
数字と権威で物事を見なければならない大人の世界が全て悪しきものであるとはワシは思わぬ。誰もを独りにしない世界を作る試みは讃えて支援すべき事柄のように思うておる
しかし、それがそれぞれの心の内に孤独を生み出してしまったのではないのか……?ワシにはそのように感じられて仕方ないのじゃ
肝心なことは目に見えない
このフレーズは『星の王子さま』の代名詞的な存在になっておるのう。実際にもこの作品の根幹に関わる重要なフレーズじゃから触れていくのじゃ
男の子……異星からやってきた王子さまは自分の住む小さな星を離れ、星々を巡礼する旅に出るのじゃ
王子さまは巡礼を始めてから7番目の星として地球にやってくるのじゃが、そこで出会った狐が言った一説なのじゃ
王子さまは地球にやってきて、自身が特別大切にしていたものがありふれていることに気づいて打ちひしがれているところで狐と出会うのじゃ
狐は人と関わることについてを王子さまに説き、王子さまはその通りに実践する。こうして時間をかけて師弟関係を築いた二人にやってきた別れの時。狐は餞別として贈ったのがこの言葉なのじゃ
王子さまが幼さのあまり傷つけた大切なもの
大切なものを大切にするために外見を目でなぞるのではなく、心で世界を見る事を覚えた王子さまが、主人公の閉ざした心の視力をもう一度開くことで世界を尊ぶことを思い出す物語。それが『星の王子さま』なのじゃ!
最後に
もう僅かにこの本に出会うのが早ければ、ワシの後悔も少しは減ったのかのう?と少々おセンチな事を考えたりもしたのじゃ
この脳から神経に染み渡るような感動は実際に読んでみなければ分からぬところもあるから是非読んでみてほしいのじゃ!とっても読みやすくてオススメなのじゃ!